毛皮なめし講座に参加しました。 | Gifuto

岐阜県東白川村。日本茶と古本、雑貨の店。6/17店舗オープン。

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2021/12/13 14:08




※動物の死骸、毛皮等が出てきます。


12月11日、12日の土日に、郡上市で行われた猪鹿庁合同会社主催の毛皮なめし講座に参加してきました。


本にまつわる雑貨を考えていた時、毛皮のブックカバーを思いつき、村の知り合いに試作してもらいましたが、自分でもなめし方を知っておいたほうが良いかな、と思っての参加です。



参加は20名ほど、男性8割、女性2割といったところ。お子様連れでの参加者もいらっしゃいました。


はじめに座学をして、そのあとさっそく全体の毛皮を剥ぐフルスキニングの実演。

獣害駆除された雌鹿の胎内に宿っていた胎児(はらご)を使っていました。


残酷だ、かわいそう、という声もあるかもしれませんが、きれいに解体されていくまだ生まれてもいない子鹿の皮、肉、骨などを見ていると、なにか大きなものへの恐れのような、敬いのような、謙虚な気持ちになりました。教会や神社仏閣にいるようなシンとした静かな気にさえなってきて、宗教って、こういう気持ちから生まれるのかな、とか。


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いただいた資料には「神秘性」という言葉がありましたが、いわゆる大量生産、大量消費向けの工業製品とは一線も二線も画する自然の偉大さ、優雅さ、愛おしさのようなものを感じ、ただ動物の死骸の皮を剥いでいるだけなのに、胸が熱くなります。



猫好きで知られる作家の町田康は、猫の魅力を聞かれた際、「家の中に野生がいるところ」と答えていました。


毛皮のなめし方は、主催の安田さんの経験と知識、技術を余すところなく我々素人にわかりやすく伝えるもので、とても勉強になりましたが、今回一番強く感じたのは、飼いならされていない自然動物と、それに反響した自分の心の奥底に眠る野生の本能みたいなものだったかもしれません。



思えば、古本が好きなのも狩猟に似ていて、どこの猟場(古本屋)に、どんなタイプの獲物(古本)が充実しているのか、どれくらい獲れるか(値付感)、どう効率よく動くか(移動時間)などを考えて、目を血走らせながら獲物を狙っているな、と考えたり。




フランツ・カフカは「人間は血の詰まったただの袋だ」と言いました。

『変身』で知られる作家ですが、他の作品も変でおもしろく、高校時代に耽読し人生を救われたと思い込み、大学時代にドイツ語を専攻しチェコまで墓参りに行った(バカ)のですが、毛皮の中に包まれた動物の肉と骨を見ると、同じことを思いました。


世界との境目である毛皮を剥ぐと血と肉が出てきて、現代社会ではなかなか目にすることの出来ない秘密のようなそれは神々しく、モノとしての圧倒的な存在感を放っていました。




そんな動物の毛皮を使ったブックカバー、鋭意製作中です。

試作品として、左はハクビシン、右は鹿。

獣害駆除で廃棄予定のものを使っています。

他商品もいくつか思いついたので試してみます。



日常に野生を。

一人暮らしだし移動が多いので猫は飼えないのですが、毛皮が近くにある生活はいいものだろうな、と思います。